第1章 「コミュニケーション・センター」

公開日 2016年04月06日

最終更新日 2016年04月06日

くりこま高原自然学校  佐々木豊志さん

宮城県栗原市で、自然体験を通して青年の自立支援などを実践している「くりこま高原自然学校」の佐々木さんは、諫早市こどもの城の「子育て支援交流事業」で親向けプログラムの開発を努めていただきました。佐々木さんは、「森のようちえん全国交流フォーラム」の提唱者でもあり、「森のようちえん」を実践している諫早市こどもの城としては、先駆者としてお手本にしたい方の一人であります。そんな佐々木さんが、諫早市こどもの城に来られ、日曜日に行っている歌の催し「こどもの城バンド」に参加されて、子どもからお年寄りまで、その場にいる人が理屈抜きでいっしょになって歌い、踊っている姿をご覧になって、思わず漏らした感想です。

「子どもからお年寄りまでいっしょになって何かをやるこの姿こそ、自然体験を実践している人たちに見てほしい。」

「ここほど、スタッフが明るく、チームワークがいい施設は他にないのでは!」

もう少し、佐々木さんと話した内容を紹介しながら、諫早市こどもの城を自己分析してみようと思います。

行政機関だからこそ

佐々木さんが注目されていたことの一つに、地域住民の存在がありました。佐々木さんも、宮城県の山中に自然学校を設立される時に、地元の方々の理解は不可欠だったそうです。その頃は90年代で、オウム真理教による事件などの社会背景により、地域の方が抱える不安を払拭する必要があったそうです。公的な施設ならいざ知らず、民間(NPO)の施設ですので、信頼していただくまでにご苦労もあったようです。

一方、諫早市こどもの城は行政の施策ですので、ある程度の信頼性は得て進めることができました(その分、議会での議決、予算案の作成、地元住民等への説明など、別の形での手続きは必要でしたが)。

民間で活躍されている佐々木さんから見て、諫早市こどもの城が行政施策であることには、ある種の驚きと共感があったようです。まずは多くの地域住民が利用されていること、その利用者がそれぞれの目的に沿って施設を活用していること、その利用者の顔つきが笑顔であることが印象に残られた(これらの要因により、諫早市こどもの城は、平成26年度に公共建築賞を受賞しました)ようです。

佐々木さんは、「生きる力」の概念を大切にしながら、冒険教育の手法を用いてご自身の活動を展開されています。

「生きる力」を培うには、多くの試行錯誤や切磋琢磨が必要だとも言われます。一方で、行政の施策は税金を使って運営するので、基本的に失敗ということは許されません。ある意味で、行政は、冒険という言葉に縁遠い性質を持っているとも言えるでしょう。行政が「生きる力」を推し進めるには、自らは冒険を避けつつ、住民には冒険的要素を提供していくという矛盾を感じることもあります。

しかしながら、行政とは住民のためにあるものです。諫早市という自治体が行政施策として、こどもの城という施設運営に一定の成果を上げている背景に、地域住民の存在があると佐々木さんは考えられたのです。その地域住民に対して、施設が提供している最たるものが、諫早市こどもの城の場合には、コミュニケーションだと感じられたようです。

スタッフの覇気

諫早市こどもの城の場合には、コミュニケーションを「提供している」というよりも、「自然発生している」と表現した方が適切かもしれません。その一翼を担っているのがスタッフの存在です。佐々木さんは、スタッフにも注目をされていました。スタッフの多くは嘱託員ですが、諫早市こどもの城のボランティア経験者でもありますので、施設職員としてだけでなく、利用者としての視点から他の利用者を見ることができます。よく、「こどもの城の一番の遊具は人だ」などと言われますが、スタッフは利用者を「お客さん」ととらえていません。遊び相手・学ぶ仲間として、利用者に寄り添っています。したがって、“普段着”の会話が自然発生しているのです。スタッフも大人ですので、一応の敬語は使えますし、少しは礼儀作法も知っています。しかしながら、遊び相手・学ぶ仲間として関わるために、“普段着”の会話を優先しているのです。

 

コミュニケーションは、現代社会の一つのキーワードかもしれません。確かに、難しい面もあります。関わることで相手が喜ぶだろうか、かえって迷惑になるのではないだろうか、などと考えてしまうと、一つの会話、一歩の行動が出ない場合もあります。諫早市こどもの城では、「相手が喜ばないかもしれないと思って何もしないくらいなら、喜んでもらいたいと思って行動してみた方がいい。それで、喜ばなかったら、まず謝る。」そう考えて行動しているスタッフがほとんどです。覇気(積極的に立ち向かおうとする意気【出典】:広辞苑)を抱いたスタッフによって、コミュニケーションが発生し、そこに地域社会が本来持っている関わる機能が盛んになっていくという循環が生まれています。

この手法が正しいかどうかはわかりません。地方自治体の施策として、地域に目を向け、地域住民のために良かれと思うことを実践していく、いわば当たり前のことを普通に実践していることを、佐々木さんに感じていただいただけです。そして、利用者の笑顔を佐々木さんが見逃さなかっただけです。

地域は英語に訳すと「コミュニティ」です。コミュニケーションと同じ音が含まれています。コミュニケーションの語源であるラテン語には、一つにするとか許すという意味もあるようです。“普段着”の会話やふれあいが失礼な場合は、どうぞお許しください。お許しいただけない場合は、より効果的に利用者の笑顔が見られる手法を、私たちスタッフと一つになって伝授してくださいますよう、よろしくお願いします。

お問い合わせ

こどもの城
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