第3章 「ネイチャー・センター」

公開日 2016年08月03日

最終更新日 2016年08月03日

当別エコロジカルコミュニティー 山本幹彦さん

NPOの代表をされている山本さんは、諫早市こどもの城の「子育て支援交流事業」で親子向け環境教育プログラムの開発を努めていただきました。
山本さんは、ソーシャルワーカーとして活躍されたあと、北海道の当別町に移られ、スウェーデンやアメリカの野外教育・環境教育の指導者と連携・協働され、様々な活動を実践されています。
「森のようちえん」という北欧発祥とされる幼児期の自然体験活動を実践している諫早市こどもの城でも、開館前からボランティア研修でも講師を努めていただきました。
そんな山本さんが、以下のようなことを問いかけられました。

「『ネイチャー・センター』って、どんなところを想像されますか?」

もう少し、山本さんと話した内容を紹介しながら、諫早市こどもの城を自己分析してみようと思います。

地域の人のための施設・環境教育

「ネイチャー・センター」と聞いてまずイメージするのは、多くの人にとって「自然」ではないでしょうか。
まさに、その名称が英語で入っていますので。「ネイチャー・センター」という名称に限らず、その土地の「自然」のことを知ることができる施設として、「ビジター・センター」という名称の施設も、国・自治体・民間などで運営され、広く知られています。
こちらは、名称に「ビジター」が入っています。「ビジター」は直訳すれば、「訪れる人」と言い表すことができるでしょうか。
旅行や観光で訪れた方々にとっても、自然のことを含め、その土地のことを知り、学ぶことができます。
しかし、旅行者であれば、「トラベラー」であり、ビジターとは異なります。
「ビジター」は、広く「訪れる人」を指すようにとらえられます。

山本さんによれば、アメリカなどにも「ネイチャー・センター」という名称の施設があるそうです。

「『ネイチャー・センター』って、どんなところを想像されますか?」という問いに、こどもの城のスタッフが、「旅行者や自然が好きな人が立ち寄り、情報を得たり、展示や簡易な体験ができたりするところ」と答えました。

「そういうイメージですよね」と山本さんが返します。

そして、「実は、アメリカのネイチャー・センターは、旅行者というよりも、“地元の方”が集まる、“地元の方のための施設”なのですよ」と続けられました。

山本さんが紹介されたのは、テキサス州にある「ネイチャー・センター」でしたが、そこでは、情報提供や展示のほかに、次のような機能があるそうです。

  • 学校などを対象とした教育プログラムの提供
  • ガーデニングや貸し農園
  • 家族を対象としたメモリアル・トゥリー(記念樹)の植樹
  • コンサート開催やアートの展示会

このような機能を提供するための収入源として大きなものは、寄付であるとのことです。
寄付される方や団体も、「ネイチャー・センター」の意義を感じておられるからだと想像しますが、一番の意義は、「その土地の人が、自然を学びながら幸せに生活できるように」ではないでしょうか。
また、貸し農園・ガーデニングやメモリアル・トゥリーの背景には、イベントなど一過性のものでなく、継続した取組の提供という考え方があるそうです。

「ネイチャー・センター」と聞くと、建物のことを指すようなイメージを抱きそうですが、「エリア(その土地の人が住んでいる地域)のことを指すのですよ」と山本さんは笑顔で語っていただきました。
そして、この「ネイチャー・センター」の看板に書かれていた言葉を紹介されました。

Our goal is to share the joy of nature with children.

(私たちのゴールは、子どもたちとともに、自然の楽しさをわかちあうことです。)

 

自然おたく”を作りたい訳じゃない

山本さんは、スウェーデンの「ネイチャー・スクール」や野外幼稚園のことも紹介していただきました。
スウェーデンと言えば、デンマークと同じ北欧に位置する国です。デンマークは「森のようちえん」発祥の地として紹介されている国ですので、どことなくスウェーデンも国をあげて「自然体験活動」が盛んに展開されているというイメージを抱きがちです。
しかしながら、山本さんは言います。

「日本と変わりませんよ。まだ、『森のようちえん』などを実施しているところは珍しいのです。」

さて、「ネイチャー・スクール」のことですが、スウェーデン国内には約80箇所があるそうです。
そのうち、山本さんが実際に訪れたのは、ニュネスハム市にある施設です。
市民が認定し、市が民間に委託した「ネイチャー・スクール」は、民家を少し改修した規模のものです。
平日の朝からクラス単位で授業として、地域の学校が訪れて、自然体験活動を機軸にしたグループワークや、算数として図形や倍数に関する授業が展開されます。
授業ですので、昼食時には市から給食が届きます。
授業の最後には、必ず「ふりかえり」の時間があり、まさに体験学習法と言われる学習形態で授業が展開されます。
そこに、サポーターとしてPTAが入り、指導者とともに子どもたちの学習を促進していく役割を担います。

つまり、地域をあげて、子どもたちの教育が展開されているのです。
内容も、自然という場のことを学ぶ社会科や理科の授業ではなく、自然という場を使って人を育てていく、いわば場の力学とでも言うべき、学び方の学習が展開されているのです。
スウェーデンの「ネイチャー・スクール」もまた、地域に根ざした教育を展開する場所であり、決して“自然おたく”を作るための施設ではないのです。

こどもの城でも、このような「ネイチャー・スクール」に似た学習が、一例だけ展開されています。
山本さんは、こどもの城が、先に述べた地域の人のための「ネイチャー・センター」に近いものとして認識され始めており、今後もその役割を担うことができるのではと言われています。

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