第4章 「大人の城」

公開日 2016年08月03日

最終更新日 2016年08月03日

利用者の方々

開館して7年。諫早市こどもの城は、もうすぐ80万人目の利用者を迎えそうです。
年間に10万人以上の利用者を迎えたことになります。
これに、出前プログラムや市外・県外に講師を派遣した人数を加えると、凄い数になります。
確かに、この数字は類似施設と比較しても、かなり多い利用者数(諫早市こどもの城の利用者数は「来館者のみ」の数を公表)です。

しかしながら、諫早市こどもの城は、子どもたちが「生きる力」を培い、そのために大人も共に学ぶという大きな目的のもとに設立されたものです。
利用者の数が多いからといって、目的が達せられたかどうかは別の問題です。
何を求めて来館されたのか、何を求めて講師を依頼されたのか、そこを分析し、把握し、何を提供することが大切なのか判断し、実行し、評価し、継続して実行されなければなりません。
ある方は子どもに思いっきり遊ぶ体験を積んでほしいと願い、ある方はPTAなど地域活動の質を高めたいと願い、ある方は自身が社会の役に立てないか活動の場を求め、またある方は子育ての悩みの相談を願い・・・と多種多様な思いを抱いて来館されます。

そんな利用者やボランティアなど、こどもの城に集っていただいた皆さんが、時々、以下のようなことを言われます。

「ここは、『大人の城』なんですね。」

もう少し、利用された方々との会話を紹介しながら、諫早市こどもの城を自己分析してみようと思います。

☆心理的な支援~親として

子育て支援は、まだまだ充実されていく余地のある分野だと考えています。
同時に、一昔前と比較してみると、充実している部分もたくさんあると思います。
例えば、子ども手当てなど経済的な支援、医療や各種運動教室など健康・肉体面での支援、そして、親どうしが語り合ったり、打ち明け合ったりできる場を提供する心理的な支援です。
これらの支援を得ることができる機会や場は、以前よりも格段に進んでいると感じます。

では、以前は、そういった支援や情報はどうやって得ることができたのでしょう。
諫早市こどもの城では、それを「地域」、とりわけ隣人(よく会う人・近くにいる人)と考えています。
「遠くの親戚より、近くの他人(地方によって多少の表現の違いがあるかもしれません)」などと先人は言われました。
人は助け合って生きていけることが実現できたのでしょう。
とりわけ、心理的な支援は、身近な地域の方、隣人と語り合うことによって得られたのでしょう。

現代でも、地域の方や隣人の力を借りながら、子育てをしておられる方がたくさんいらっしゃいます。
一方で、自分だけ、我が家だけで子育てをしておられる方も時として見受けられます。
そして、情報化が、他人の力を借りるという考えから遠ざかることに拍車をかけている例もあるようです。

こどもの城では、開館以来、会話や身体接触を伴う直接的なコミュニケーションを重視してきました。
これは、かつて地域(隣人)が担っていた親の心理的な支援に関して、その意義を再確認したいという思いがあるためです。
併せて、こどもの城では、物理的な距離と心理的な距離は比例すると考えているためです。

平日のこどもの城では、スタッフの傍にお母さんたちが集っている姿をよく見かけます。
中には、赤ちゃんを抱いているお母さんもいます。
実は、その赤ちゃんが“我が子”ではないことも多々あります。
そして、多くの場合、集っているお母さんたちは、「きょう、こどもの城に行こう」などと話し合って集っているわけではないのです。
あたかも、かつて地域にあった縁台のまわりに人が集っているような状態なのです。
子どもたちがそうであるように、大人もまた、その日に出会った人とすぐに寄り集まり、仲良くなることができるのです。
このような状態が、子育て中の不安解消につながるなど、心理的な支援の役割を果たしているかのようです。
ですから、「大人の城」と称されるのでしょう。

☆こどもの城の教育的機能~教師として

こどもの城には、学校種を問わず、小学校から大学まで「先生」や「教師」と呼ばれる方々が、自身の勉強のために集って来られます。
これには大別して2つの形式があります。
一つは、採用されて2年目や10年目など、“行かなければならない”研修として、こどもの城を選択される場合です。
そして、もう一つは、ボランティア養成事業などに、“自ら”学びに来られる場合です。

前者としては、これまで開館以来、10名ほどの教師が研修に来られました。
研修内容は、個人の抱える課題を基に各人と相談しますが、ほとんどは利用者とともに遊ぶ、または親と語ることに費やされます。

今年度に来られた3名の教師からは、次のような感想も聞かれました。

「全ての教師がここに来た方がいい。」

他にも、こんな感想が聞かれました。

「教師を目指したときの原点が、こどもの城にはあった。学校でも、本当は、こうやって多くの時間を子どもと過ごすなり、保護者の方と語り合うなりして過ごしたいのですが、なかなかできなくて。」

このような感想は、現代の教師の置かれた立場を考えるうえで、なかなか興味深い感想です。
今後も、こどもの城では、多くの教師の研修を受け入れていきます。

もう一つ、後者としては、開館前から数名の教師が、こどもの城のボランティアとして活動しながら、研修などを活用して、自身の学級経営などの教育手法を学びに来られています。

教師を対象に実施されている研修のほとんどは、勤務として命令されて参加する形態です。
その多くが、教師だけを対象としたものです。
他は、個人として教師自身が学びの場を求めて参加されることになりますし、研修内容によっては遠くまで行く必要があるものもあり、命令以外では参加しない(できない)教師も多くおられることでしょう。

一方で、教師が抱える課題は時代の推移とともに複雑になり、経験だけでは乗り越えられない内容のものも増えてきているように思います。

このような中、こどもの城では、自ら、カウンセリング、ファシリテーション、企画、リスクマネジメントなどをテーマとして学びの機会を提供しています。
現在、こどもの城のボランティアとして学びに来られている教師の多くは、30代~40代の現役の親世代です。
「教師として、そして親として、両面での学びになっている」という感想をいただいています。
また、教師だけを対象とせず、例えば、いっしょに参加している保護者と立場を超えて研修されるなどして、かえって教師にとっては多くの学びがあることもふれておきます。
教師と保護者、どちらも大人に違いありません。
このような現状もまた、こどもの城が「大人の城」と称される一因かもしれません。

今後も、こどもの城でよければ、いろんな教育手法を学べる場になるように、広がっていけばいいなと考えています。

☆森のようちえん全国交流フォーラム~実行委員として

平成27年11月21日~23日の3日間、国立諫早青少年自然の家の教育機能を活かして、九州で初めて「森のようちえん全国交流フォーラム」が開催されました。
このフォーラムは、開催地において実行委員会を結成して実施するものです。
開館以来、「森のようちえん」の活動を展開してきたこどもの城も、この実行委員会において、企画段階から役割を担わせていただきました。
何よりも、開館以来、子育てや教育に関する様々な方がこどもの城を訪れていただいたので、多くの人的な情報がこどもの城に集っていましたので、実行委員の呼びかけにおいても中心的な役割を果たすことができました。

それよりも、このフォーラムにおいて最も活躍していただいたのは、当日の運営スタッフとして集っていただいた方々です。
主婦、婦人会、老人会、議員など立場を超えて多くの市民がフォーラムの運営を支えていただきました。
まさに、多くの大人が学びの場をともに創っていただいたのです。
このように、多くの大人がこどもの城に集る現状もまた、「大人の城」と称される一因だと考えます。

 

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