第5章 「諫早市へのフィードバック」

公開日 2017年03月01日

最終更新日 2017年03月22日

この章では、各地に講師を派遣して学んだことを、なんらかの形で諫早市に還元したく、そんな思いを綴ってみます。

嫌がられても誘うこと

各地に講師を派遣するということは、こどもの城の取組について聞かせて欲しいという先方の思いがあります。でも、なぜ、こどもの城なのでしょう?

子育てのことであれば保育士さんや幼稚園教諭の方に、教育のことであれば学校の先生のほうが適切かもしれません。しかし、保育士さんや幼稚園教諭、小中学校の先生から、その方々の研修として、こどもの城に依頼が来ることも多いのです。つまり、こどもの城の取組を参考にしたいということなのです。

こどもの城としては、特別なことをしている感じもなく、ましてや名前のついた商品のようなプログラムを売り出しているわけでもありません。ネットなどの手段を使って売り込むこともありません。ただ、こどもの城は、常にチャレンジすること、試行錯誤することを大切にし続けています。中でも、主役である子どもたちがチャレンジすることを大切にし、笑顔で誘い続けています。アドベンチャー・カウンセリングという考え方の影響も受けています。

なので、子どもたちに、スタッフは「おいっ! いっしょに遊ぼうぜ」など、一歩踏み出してみることを誘い続けています。そして、子どもたちが一歩踏み出せるように、親に対しても誘い続けます。その誘い方も、「もしよろしければ・・・」のような謙った誘い方ではなく、「ねえ父ちゃん! いっしょにやろうや!」のように、あたかも旧知の友だちのような誘い方が主です。もしかしたら、相手が嫌がることもあるかもしれません。しかし、先回りして何もしないくらいなら、やってみて、相手が嫌がったら謝ろうという考え方を大切にしています。この手法が正しいかどうかはともかく、こどもの城の特徴の一つだと言えるでしょう。そのような手法について紹介してほしいという依頼が多いことを市民の皆さんにも還元してみようと考えています。

“出前の日”の取組

さて、諫早市に還元しようとしても、こどもの城には(休館日を除いて)毎日、利用者が訪れます。こどもの城では、可能な限り利用者の方と語り合う時間を大切にしていますが、諫早市民の中にも、まだこどもの城を利用したことのない方もいらっしゃるでしょう。また、利用したことがある方でも、例えば、こどもの城で何らかのプログラムに参加したという経験がなく、単に「訪れてみただけ」という利用形態で帰られた方もいらっしゃるでしょう。こどもの城のことを、「ふらっと来れば遊ぶとこ、ねらって来れば深いとこ」と表現されたお母さんがいましたが、まさに、「ねらって来れば・・・」を知らない、未体験の方も多くおられるのです。市外・県外に、子育てや教育・指導者研修などで講師を派遣していることなど、知る由もありません。しかも、知らない方・未体験の方の中には、保育士・幼稚園教諭・学校の先生方などが多く含まれます。

そこで、こどもの城では、平成27年度から「出前の日」を設定し、諫早市内の幼稚園・保育所・学校・福祉施設などにスタッフが出向く取組を始めました。とりわけ、平成27年に開催された「森のようちえん全国交流フォーラム」の効果か、保育園からの依頼で、幼児期の自然体験活動について、実際に園児向けのプログラムや保育士など指導者向けの研修で、「出前」をする機会が増えました。このような出前により、「ねらって来れば・・・」が市内に浸透していくことを期待しています。

地域と連携する国立青少年教育施設

諫早市内には、多くの市民が学べる施設があります。中でも、こどもの城と同じ白木峰に位置する国立諫早青少年自然の家は、昭和53年に受け入れを開始し、これまでに多くの諫早市民も利用されました。現役の子育て世代の親たちの多くも、小学生や中学生の頃に、宿泊学習として利用した経験があるようです。

実は、このような国立の教育施設は、全国27箇所に存在し、その一つが諫早市にあるのです。しかも、全国の少年自然の家では、3番目に設立された歴史を持つ施設なのです。諫早市が作成した冊子「先人ガ築いた未来への財産―諫早市65年の歩み―」の中にも、開所式の様子が写真で記録されています。自然の家にも、諫早市に建設が決定した際に、市役所に垂幕が下がっていた写真が残されています。市全体として、国立の教育機関設立を待ち望んでいたかのように感じます。

それから40年近く経ち、日本は少子化が叫ばれるようになりました。また、子どもたちの体験活動の少なさを示すデータもあります。さらには、学校の宿泊学習も、日程など量的なものと体験の中身など質的なものも、十分なのかという疑問もあります。平成28年11月に、国立青少年教育振興機構が主催した全国的な研修会で、地域連携についてのテーマがあり、こどもの城から講師を派遣しました。その場では、こどもの城の職員が、「出前の日」をはじめ、時にはボランティア活動で地域に出向く事例を紹介しました。何はともあれ、当該の地域にとけこみ、地域の方々と語り合うことの重要さを参加者が認識されたようです。この点、諫早市には、国立青少年教育施設(自然の家)がありますので、この施設の機能を生かした様々な取組が展開できそうです。こどもの城でも、これまでに、大学、地域の青少年健全育成会、こどもの城で知り合った子育てサークル等に情報提供し、自然の家を活用したプログラムを展開してきました。今後も、地域の体験活動・学習拠点として、連携した取組を充実できればと考えています。

地方創生の一翼を担えるように~北広島町・当別町の事例に学ぶ

ここ数年、地方創生という言葉を見聞きする機会が増えました。諫早市にも政策振興部に「地方創生室」という部署があります。同じ政策振興部が所管するこどもの城も、今後も、地方創生ということの意味を意識して、日々の実践を重ねていく必要を感じています。

平成29年1月に、北海道の当別町にこどもの城から講師を派遣しました。当別町では、学校を主とした体験学習を地方創生の一環として取り組もうとする動きがあるようです。同町にあるNPO法人「当別エコロジカル・コミュニティー」の代表である山本幹彦さんは、かつて、こどもの城ボランティア研修の講師を努めていただいた経験があり、当別町が、こどもの城の情報を聞き、取組や運営を紹介してほしいという依頼でした。山本さんは、文部科学省の講師を努めるなど、環境教育の分野では有名な方ですが、ソーシャル・ワーカーとして活動されていた経験をお持ちです。法人名にも「コミュニティー」があるように、地域を意識された活動に継続的に取り組んでおられます。実績のある山本さんという人材がいる当別町が、体験学習を地方創生の一環として取り組むことに、地域の独創性を感じます。

また、平成28年9月には、広島県北広島町の主任学芸員である白川勝信さんが、こどもの城に来られ、一日、ボランティア体験をしていただきました。白川さんは、北広島町で子どもたちの林業体験などを通じて、次代を担う若い世代に、町の方々とともに、地域にある資源について価値を再発見する取組を続けておられます。白川さんが特に意識していることは、地域での林業体験が、地域の経済を回すように仕組んでいることです。これらの実績から、平成29年2月、東京で開催された「ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード」において、白川さんはファイナリスト10人の中から、見事、大賞に選ばれました。

山本さんや白川さんのような方々が、こどもの城に注目され、お越しいただいたり講師として訪ねたりできたことは、光栄です。諫早市こどもの城のキーワードは、「子ども」、自然」、「地域」、「遊び」、「学び」・・・と多岐にわたります。それらをつなぐのは、「人」です。地方創生の動きの中でも、“人が輝く創造都市”である諫早市において、こどもの城の取組も、その一翼を担えるように、これからも試行錯誤を続けていきます。

お問い合わせ

こどもの城
住所:〒859-0307 長崎県諫早市白木峰827番地2
TEL:0957-24-8017
FAX:0957-24-8016