第1章「コロナウイルスとこどもの城」

公開日 2021年03月15日

最終更新日 2021年03月18日

コロナ禍? 

 コロナウイルスの情報が毎日、メディアによって流されていますが、その度に「コロナ禍」という言葉を耳にします。この「禍(か・わざわい)」という言葉は、これまで日常生活であまり使われていなかったように感じますが、今では、多くの方が理解して使われています。辞書で調べてみると、【禍】傷害・疾病・天変地異・難儀などをこうむること。悪いできごと。不幸なできごと。災難。(出典:広辞苑、岩波書店)とあります。まさに、すべての解釈が当てはまるような時代になったように感じます。そして、例に漏れず、こどもの城にもその影響が及びました。

 令和2年2月末に国の緊急事態宣言が出され、こどもの城は、初めて、疾病による臨時休館を余儀なくされました。平成21年,こどもの城一年目の冬には、新型インフルエンザの流行により、12月頃、一時的に利用者が激減したことがありましたが、休館には至りませんでした(興味深いことに、この時期にこどもの城を利用されていた方々は、ほとんどインフルエンザに罹患することがなく、少ないながら、毎日のように利用されていました)。これまで、自然災害の影響によって臨時休館することは多々ありましたが、未知のウイルスによる休館に、その時々でのベストなあり方を模索することが求められました。

 約2か月の休館の間、県外在住の家族と接触した一部のスタッフを除き、他のスタッフは休まずに、周辺自然環境の整備、教育や福祉に関する自主的な研修、そして国民への特別給付金の支給事務などを行いました。早く感染が収束することを願いつつ、これまでの業務の中で、なかなかできなかったことを見つけ、力を溜めることを選択しました。

 その後、世界的にも、少しずつウイルスに関する知見が得られ、感染が下火になるとともに、感染対策を講じたうえで再開できることとなりました。まずは、屋外の活動のみ利用できる時期があり、利用対象も諫早市民のみ、長崎県民のみと段階を踏み、6月22日、利用者数や時間帯を制限しつつも、ついに館内利用を再開することになり(対象を制限して)、開館して初めて、予約制による利用方法を選択しました。令和2年末現在も予約制は継続されています。予約による慣れない利用方法は、知らずに来館された方に対して、お断りをしなければならないなど、難しい運営が付きまといます。しかし、今は、未知のウイルスに対して、社会全体で対策を考える時期だととらえて、苦渋の決断をしなければなりません。その決断の先には、児童施設として大切な視点があります。それは・・・

 「このような中でも、子どもたちは日々、成長を続ける」

ということです。そして、子どもたちだけでなく、親も成長を続けるという視点です。そのために、今も、屋外での自然体験活動はもとより、ものづくりなどの創作活動、親向けの子育て相談なども実施をしています。夏に取材されたテレビ局の報道では、利用者がインタビューに答え、「開館してくれて自然体験ができ、ありがたいです」、「こどもの城を信頼して利用しています」などの声を聞くことができました。「禍」の時代でも、できることはありますので、今後もアイデアを出していきます。

 昨年の今頃を思い返すと、こどもの城では、人々はマスクを着けずに来館していましたし、熱を測らずに館内に入れました。一日に2回の「手洗いタイム」はありましたが、まだ、コロナウイルスの脅威をそれほど感じることもなく過ごしていました。時には、一日千人を超える来館者もあり、日曜祝日には、互いに手を取り、肩を抱き、大きな声で歌い踊っていました。「禍」と表現されたコロナウイルスは、晴れた空に突然起こる雷のようで、まさに青天の霹靂(へきれき)とも言うべきものです。しかし、社会全体として、子どもたちの成長を止めたり、あきらめたりすることはできません。「禍」という字が使われたことわざに、「禍福は糾(あざな)える縄の如し」というものがあります。禍と福は、縄のように交互にやって来るというような意味です。「コロナ禍」ではなく「コロナ福」という言葉は当てはまりませんが、「禍」を「福」に変える視点は、持ち続けたいと思っています。

接触手法と感染対策

 これまでのこどもの城における代表的なコミュニケーション手法には、直接接触がありました。赤ちゃんを(ずっと)抱く、プロレスごっこでぶつかり合う、手を取り合う、肩を組む・・・。いつしか、それが、こどもの城の特徴となり、子どもたちの愛着形成や成長の面からも、親に対する支援の面からも重要ではないかと思われるようになりました。今でも、そういった手法を求めて来られる方も少なくありません。

 しかし、コロナウイルス感染拡大に伴い、これまでのコミュニケーション手法を見直す必要が出てきました。「ソーシャル・ディスタンス」と言われる身体的な距離の確保が大切であるとの知見が示され、さらには大声を出すことさえも感染防止に向けて避けなければならないこととして広まりました。かつて館内に響いていた大きな歌声は、今は、聴こえません。知らない人でも肩に手をかけ、一列の“列車”を作って館内を歌い歩き回っていた景色は、今は、見られません。その景色を見るだけで、多くの言葉でこどもの城を説明するより、こどもの城がどんなことを大切にする場所であるかを理解できたものです。したがって、感染対策を講じながらも、今は、少し手法を変えて利用者とのコミュニケーションを図るようにしています。

 一つのヒントがボディアクション(身体表現)にあるのではないかと思います。米国の心理学者のメラビアンさんによれば、言語そのもので相手に伝わるのは7%で、他は声の調子、視線、ジェスチャーなど非言語の要素だそうです。顔にマスクを着けて表情の見えづらいこの機会に、非言語のコミュニケーションについて、利用者とともに考えることができればと思います。

椎の実~自然からの恵み

 晩秋から初冬にかけて、こどもの城の周辺は、椎の実がたくさん落ちています。感染の波によっては、利用者が少ない日もありますが、開館以来、屋外での自然体験活動を勧めてきたこどもの城では、日々、利用者を屋外に誘います。屋外は、ともすれば密室となる屋内に比べて、感染のリスクは低くなるのではないかと思われます。寒さの中でも、利用される親子が、椎の実を拾い、炒って食べるという景色が見られています。自然と共生し、自然からの恵みをいただくことで、畏敬の念を抱いたり、自然と共に暮らすことの重要性に気づいたりできるかもしれません。今年度は、近隣の国立自然の家と「キャンプの日」という共催事業を実施していますが、意外に参加者が多く、もしかしたら、感染拡大を契機に、屋外の自然体験が少し見直されたのかもしれないと感じています。

お問い合わせ

こどもの城
住所:〒859-0307 長崎県諫早市白木峰827番地2
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